コラム
2025.12.08
「文化資産を守る為に」
〜ビネガーシンドローム対策の最前線〜
近年、フィルムや磁気テープなどの記録媒体に保存された文化資産が「ビネガーシンドローム」によって急速に劣化する事例が増えています。
これは、主にアセテート系フィルムが加水分解を起こし酢酸を発生させ、酸っぱい臭いを放ちながら収縮・変形・脆化していく現象です。
放置すれば、貴重な画像や映像が永久に失われる可能性があります。
〜なぜ起こる?ビネガーシンドロームのメカニズム〜
アセテートフィルムは、湿度や温度などの環境要因によって加水分解が進行します。
特に高温多湿の環境では劣化速度が加速し、酢酸の発生により周囲のフィルムにも悪影響を及ぼす「連鎖劣化」が起こることが知られています。
〜対策の基本:予防と早期発見〜
環境管理の徹底:保存庫内の温度は20℃±1℃、湿度は40%以下を目安に維持
定期的なフィルム検査:外観・嗅覚・触感のスクリーニング・規格・指針に基づく点検
隔離保存:劣化が確認されたフィルムは他の資料と分離し、専用容器で保管
デジタル化の推進:劣化が進む前に高精度でデジタルアーカイブ化
当社では、文化機関・自治体・企業アーカイブ向けに、以下のような支援を行っています。
●フィルム劣化の状態検査と保存対策
●保存環境の設計・機器導入支援
●デジタル化業務の設計・運用支援
●長期保存に適したメディア選定と移行計画
文化資産の保存は、未来への責任です。ビネガーシンドロームへの理解と対策を深め、次世代に貴重な記録を確実に継承していきましょう。

